児童文学だけど、こういうのは大人が読んだ方がいいんじゃないかと思う本です。
◆クロティの秘密の日記
1860年12歳の奴隷少女クロティが綴った日記のお話です。
フィクションではあるのですが、歴史を元に書かれており資料以外からも実際の地を訪れて調べたそうです。
奴隷制をめぐって南北戦争が起こる前のヴァージニア州が舞台です。
最初のページに人物紹介と奴隷制について説明された地図があるのですが↑
灰色の部分が奴隷制を許していたエリアで、奴隷エリアから逃げるためには北(白い部分)に行くしかなく、その後、北に逃げても強制送還されるようになったので、カナダまで逃げる必要があったそうです。
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奴隷は読み書きを習ってはいけなくて、泳いで逃げないよう「泳ぎ」を覚えてもダメでした。
もし、それがバレるとひどく打たれるか、遠い南部まで売り飛ばされてしまうので、奴隷たちは恐れていました。
奴隷制や南北戦争という単語だけでは、想像できない世界がこの本の中にはあります。
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白人と奴隷の間に生まれた子供は、奴隷かそうじゃないか。
もし、母親が奴隷なら白人の子供を産んでも、その子供は奴隷と法律で決められています。
この本に出てくるヒンスという男の子は、農園の主人の子供と言われていますが、母親が奴隷なので見た目が白人そのもののヒンスも奴隷として扱われています。
そして、結婚の選択も子供の名前を付けることも奴隷には自由がありません。
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この本は、クロティの日記として話が進んでいきます。
クロティは坊ちゃんの勉強中に、そばでうちわを仰ぎながら文字を覚えました。
それがバレると殺されるので、クロティは秘密に日記をつけて隠しています。
クロティが働く農園でいろんなことが起きます。
まず、農園で働く2人と幼馴染の友達が生まれた子供を連れて脱走します。
しかし、それがバレて撃ち殺されたり、溺れて死んでしまいます。
そこに、坊ちゃんの家庭教師の先生がやってきます。
この人は何者なのか。
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本の中に、「地下鉄道」という言葉が出てきます。
本来の意味ではなく、奴隷の逃亡の手助けをする地下組織の事を指します。
各地に「駅」(逃亡を助ける人の家)があって、「駅長」(逃亡者をかくまったり、傷の手当や食事を提供する人)がいて、「車掌」(逃亡者を次の駅まで連れて行き、道を教え食べ物を与える人)がいます。
もちろん、逃亡の援助をした者は見つかれば厳しく罰せられます。
これは、実際にあった地下組織でした。
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奴隷を扱うことは法律で許されているのだから自分たちは正しいんだと言ってる人々の姿を見て、いつの時代にもこういう人たちはいるのだと思います。
正々堂々と悪いことをするために喚き、歪んだ正論を広めようとする人たち、学校で習う「南北戦争」やニュースで見る黒人問題などが、もっとリアルに立体的に感じ取れる本だと思います。
どこかの偉い学者や研究者が書いた難しい本ではなく、12歳の女の子が感じた言葉がすごく感情を揺さぶられます。
そして、クロティが最後にした決断が意外なものでびっくりしました。
そういう結末は思いつかなかった。
この子すごい。